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日本酒の会 sake nagoya 「知多蔵見学」の報告Part1

日程 2006年12月9日(土)
酒蔵 天埜酒造(愛知県半田市亀崎町9-112)
宿泊 民宿富士(愛知県知多郡南知多町篠島字堂山102-1)


今年の日本酒の会sake nagoya合宿は、知多の酒と篠島の海の幸を極める企画。旅程は、以下の通りである。

1日目
・金山駅ボストン美術館前13:00集合
・天埜酒造(初夢桜)蔵見学
・師崎港より篠島に渡船
・民宿富士知多の酒・魚を楽しむ宴
2日目
・師崎・魚太郎買い物
・原田酒造(卯の花・生道井)蔵見学
・金山駅ボストン美術館前解散

【集合】
2006年12月9日(土)天候雨。

昨年の静岡焼津合宿と異なり、今日は冬の雨。
金山駅南口は、雨の土曜日の午後であるが、通勤客でもない、観光客でもない人達が賑やかに通りすがっている、流石に師走の都会である。
雨を避け、見通しの良い全日空ホテルの階段の庇の下で待つ。続々と会の精鋭達が集まってくる。今日は11人の精鋭である、2人のお姫様と9人の侍たち。
出発の時間になり、幹事さんの車二台に分乗させていただき、天埜酒造を目指し出発する。

 


【天埜酒造蔵見学】

知多半島は江戸時代末期には、神戸・灘に次ぐ日本酒の生産地であったことはあまり知られていない。
江戸時代、尾張藩は酒造の保護・奨励に力を入れ、米の増産、優良な仕込み水の確保、天然の良港に恵まれた知多の地の利を生かし、廻船による江戸市場への出荷により江戸の人々の評価を得たのである。江戸末期の最盛期には、二百を超える酒蔵があったそうであるが、明治以降衰退し、現在に至っている。現在も酒造業を取り巻く環境は厳しいものがあるが、知多の杜氏は、歴史と伝統の上に銘酒を造り続けている。

天埜酒造は、当時庄屋であった六代目天埜伊左衛門が嘉永元年(1848)に創業し、江戸末期以来の歴史を有している。
長い歴史には逆境もあり、明治14年には火災により一時酒造業を中止、大正6年に7代目が再興、戦前までは銘柄「種蒔」として愛されていた。
現在の「初夢桜」は昭和21年8代目が、「戦後の復興に励んでいるみなさんに親しまれるように」との祈りを込めて命名したとのことである。
昭和34年9月26日の伊勢湾台風の襲来により酒蔵が水に浸かり、甚大な被害を受けたが、初夢桜は逆境をはねのけ、現在も可憐な花を咲かせ続けている。

他の蔵にない特徴が現在の初夢桜にはある。それは、杜氏さんが女性なのである。古は、蔵は女人禁制の場であった、男女機会均等法の御代とはいえ、伝統の仕事場である、女性の杜氏さんは、まだ珍しいと言える。杜氏さんは、現当主の奥様の天埜幹子さんである。
その酒造の実力は、全国の蔵が目標にする「全国新酒鑑評会」にて、平成15年度、16年度、連続金賞受賞により証明されている。

漆喰の白壁の初夢桜の表示のある天埜酒造合資会社の門を入ると、すぐ右に展示販売コーナーがある。新酒の季節である、購入のお客様が車で来場されている。


さかばやしと暖簾をくぐり中に入る、右側が銘柄の展示コーナー、真ん中に新酒の搾りたて、試飲用テーブル、その奥は和机の置いてある畳敷きの小上がりになっており、数々の表彰状、初夢桜の薦樽が展示され、華やかである。和机の上には伊勢湾台風当時の罹災写真のアルバムが置いてある、大変な被害状況である。
その爪痕は、現在も蔵の柱に残る、白い生石灰である。左は事務スペースになっている。


当主と杜氏さんが来られ、蔵を見学させていただく。
販売コーナーの前を奥に進むと、右手に貯蔵冷蔵庫が有り、その先に進むと酒蔵になる。一番手前に麹室がある、造りの真っ最中であり、ガラス越しに見学する。杜氏さんが麹を持参され、試食させていただく、口に含むと、硬くもなく、柔らかくもなく、バサつかず、粘っこくもなく、表現の難しい食感であるが、次第に甘くなる。


折から黄金色の新酒が搾られている酒蔵の中で、杜氏さんから、初夢桜の酒造りについて説明を受ける。
杜氏さんの話しぶりは、穏やかで、おっとりとして、色白の美肌に、細い金縁の眼鏡を掛けた風姿は、白衣を着せれば女医さんにピッタリな雰囲気を発散している。初夢桜の味わいが、穏やかで、おっとりとして、柔らかく、ふくらみがあり、後味に嫌味を感じないものであることが素直に理解できる。
杜氏さんが、昨年6月の初夢桜特集の定例会に出席していただいた際、市販されていない山田錦大吟醸原酒生酒と夢山水大吟醸原酒生酒をご持参いただき、ご馳走になった。手違いによりこの2銘柄もブラインド評価の中に入ってしまったが、結果は1,2位であった。会員の舌が確かと言うより、飲めば自ずからわかる風格なのである。豊かな嫌味のない世界を感じるのである。


〔仕込み水〕

仕込み水は、地下水の汲み上げである。亀崎は海岸に近いが、知多半島の中央から海岸方面へ流れる伏流水のため、塩分は含まれず、軟水とのことである。

〔米〕

山田錦・五百万石といったメジャーな酒米は勿論、岐阜県産のヒダホマレ、愛知県産の夢山水、若水にも力を入れている。米の性格により、使い分けている。
山田錦は矢張り酒米の優等生で扱いやすい、ヒダホマレは吸水が速く浸漬に注意する、若水は味が濃くなり易いので、スッキリとした酒質にあった若水を栽培できる農家にお願いしている、精米は外部に委託しているとのことであった。

〔機器〕

  • 甑は木製の物を使用している。
    洗米・蒸しすべて手作業で丁寧に行うのがこの蔵の方針。
  • 搾りは、ヤブタと槽を酒質により使い分ける。  
  • 仕込みタンクは、小さい物を使い、純米酒から大吟醸まで同じように丁寧に造る。
  • 貯蔵は冷蔵庫・コンテナーを使い分ける。


趣のある柱


並ぶタンク


天井に残る石灰


甑(こしき)


放冷機


佐瀬式搾り機


ヤブタの搾り機


中庭


ほっとする光景


再び、販売コーナーに戻り、新酒の搾りたてを試飲させていただく。新酒らしいピチピチとした発泡感がありながら、柔らかく酸味が広がる、後味に苦味のない、正に新酒そのものである。
各自お目当ての初夢桜を購入することが出来たが、展示されている初夢桜の酒器(徳利と杯)、亀の置物の酒器が非売品であったのは残念であった。

ご無理をお願いし、仕込み水を今宵の宴の和らぎ水として2本いただき、天埜酒造さんを後にし、篠島に向かった。

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