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日本酒の会 sake nagoya 「知多蔵見学」の報告Part1

日程 2006年12月9日(土)
酒蔵 天埜酒造(愛知県半田市亀崎町9-112)
宿泊 民宿富士(愛知県知多郡南知多町篠島字堂山102-1)


【篠島渡船】
渡船場の待合室は、島に渡る人達で一杯である。若い人も、おじさん、おばさんも、個人客も、団体も、舟が出るのを待っている。
出航時間になり、桟橋に向かう、想像していたより遙かに大きな船体である。


是ならばあまり揺れないかもしれない。篠島までは10分程度の時間であるらしいが、筆者は酒にも酔うが、舟にも酔うのである。
鉛色の空と鉛色の海の間を、白い波を押し出しながら船は走る。ビルの建つ島が視界に入る、あれが蛸で有名な日間賀島らしい。


やがて、期待ははずれ、船は大きく揺れることもなく篠島に到着した。
民宿富士の車が2台お迎えに来ており、観光地である、便利なものである。


【民宿富士】
民宿富士は、広い道路に面しており、通り沿いはホテル・民宿が軒を連ねている。道路のすぐ前に砂浜が広がっており、夏のシーズンには海水浴客が溢れるであろう。右側の入り口を入ると一階には大きな水槽があり、伊勢エビ・カワハギが泳いでおり、水槽の上の篭には白ミル貝が大きな舌を伸ばしている。
階段を上る、他に宿泊客はなく貸し切りである。二階の部屋から、外を見ると、知多の海が目の前に広がる。
時間はまだ5時前、宴会の時間まで1時間以上ある。宴会場の隣の部屋で、時間を過ごす。錠前の知恵の輪に興ずる人、TVを見る人、お風呂に入る人、それぞれである。
TVでは、梅沢富美男がレポーターになり、海産物の通信販売の番組を流している。タラバガニ、海老、ウニ、タラコ、明太子、ちりめんじゃこetc次から次に、試食しては、オイシイを連発する。確かに、それぞれ美味しそうである。海の幸の篠島で、宴会の始まるのを待ちながら苦悶の時を過ごすのも一興である。


【知多の銘酒と篠島の海の幸】
待ちわびた宴会の時間が遂にやってきた、期待に胸をふくらませ、宴会場に向かう、テーブルの上には、舟盛り2艘と各人に石鯛の焼き物・車エビの焼き物が並んでおり、部屋の右のテーブルの上には銘酒が並び、その時を待っていた。

〔海の幸〕
当初、舟盛りと焼きものしか並んでいなくて、淋しげであったテーブルも、宴会が始まると、置き場に困らぬよう、順番を待っていた海の幸が登場し賑やかなものとなった。
  • お造りの舟盛り
     鯛の生け作り、サザエ、白ミル貝。
     白ミル貝の舌(出水管)の中にある内臓物は、牡蛎の風味のする珍味との説明があった。滑らかな舌触りのミルクのような食感、牡蛎のように磯の香りは強くなく、意外に上品な味わいである。
  • 蛸の桜煮
     朱の皿に乗せられた蛸が、鉢巻きこそしていないが、威勢良く登場する。
     S氏が専用のハサミを使い手際鮮やかに、食べ頃サイズに切り分ける。
     氏は、コンピューターを使う先進的なお仕事であるが、料理の腕も確からしい。博覧強記・多能の人である。思想・哲学・文学・映画・アニメの分野に話が及べば、弁舌留まるところを知らない。 現今、話題のC.イーストウッドの硫黄島2部作の話題を出せば、作品がよりよく理解が出来る、別次元の世界に誘われるであろう。蛸の頭が美味しいことを知っている筆者は、まず頭からいただく、 矢張り蛸は頭である。次に、足。近くのスーパーで売られているアフリカ・モ−リタニア沖産の蛸とは似て非なるものである。柔らかく、噛むと旨みが口の中に広がる。蛸は明石か知多に限る。
  • 大アサリの浜焼き
     醤油の加減が良く、焦げ臭くなく、生臭くなく、アサリの旨さが楽しめる、思わず、つゆまで飲んでしまった。
  • ししこの酢の物
     頭がとってあり、見たところキビナゴと思ったが、骨が硬くない。聞くと、地元では、ししこと呼ぶ魚だそうで、シラスの親だとのこと、シラスの親は鰯だけではないらしい。この酢の物が美味かった。 キュウリと合えた普通の酢の物であるが、酢のツンとした引っかかる刺激が抑えられており、まろやかに、適度な甘さと調和している。民宿の女将さんは、身体は小さいが肝っ玉は大きそうで、声も大きく、 色浅黒く、漁師のおかみさん風であるが、料理の味付けは、柔らかく、雑味無く上品である。初夢桜のように丁寧な、いい仕事をしているのであろう。
 

  • キス、海老、大葉の天麩羅
  • 枝豆、小海老の唐揚げ
  • 生シラスの刺身
     後味のほんのりとしたほろ苦さが知多の銘酒に良く合う。酒の肴に毎日食べたいものだ。
  • 生シラスのかき揚げ
     知多に来なければ、食べられないもの。
  • ししこのツミレ鍋
     ししこのツミレ、白菜、葱、椎茸、えのき茸の入った醤油味の鍋である。
     ししこをたたいて海草と一緒に団子にしてある。食べる前に、崩してから口に入れるのが篠島の流儀とのことである。

最後には、鯛の生け作りのあら煮がでるコースなのだが、もう満腹である、翌日の朝食に回していただいた。


〔知多の銘酒〕
いよいよ、酒の話である。
知多の酒を集めるのは、難しく、バイヤーさんが、車を飛ばして買い出しに出かけ、揃えた有難い酒達である。達磨正宗と旭若松はA氏が合宿のため持参されたものである。(寸評は、筆者の独断であり、会の公式評価ではない。)

  • 天埜酒造(愛知)初夢桜大吟醸夢山水
     厚みのある、ゆったりした味、ふくらみもある。残味に苦味無く、後味良い。
  • 原田酒造(愛知)卯の花純米大吟醸
     厚みは少なく、スッキリとした、吟醸酒らしい世界。残味は、かすかな苦み系。
  • 丸一酒造(愛知)ほしいずみ純米
     第55回名古屋国税局酒類鑑評会(市販酒の部)純米酒優等賞受賞。
     丸みのある、旨い酒で、後味の嫌味無い。いい酒である。
  • 盛田(愛知)ねのひ純米
     保存状態のためか、腰が無くて、味が薄い。
  • 中埜酒造(愛知)国盛しぼりたて本醸造原酒
     麹の味のする、酸味のある新酒らしい味。
  • 丸一酒造(愛知)ひがしちた純米
     伝統的な日本酒の味、甘く、酸味もある。
  • 原田酒造(愛知)衣が浦若水特別純米
     酸味のある、厚味のある味。甘みもある。
  • 澤田酒造(愛知)豊穣純米吟醸2年熟成
     伝統的な日本酒の味。燗酒向きか?
  • 澤田酒造(愛知)白老冷やおろし本醸造
     味わいのある濃醇酒。雑味は無い。
  • 天埜酒造(愛知)初夢桜しぼりたて本醸造原酒
     発泡感有り、酸味のある、丸い世界。麹の味がある。
     新酒そのものの姿。
  • 野村酒造(愛知)幸娘純米
     麹の味がする。酸味系の味。後味に僅かな雑味有り。
  • 白木恒助商店(岐阜)達磨正宗未来へ1999年
     A氏が7年熟成させた貴重な古酒。最初の解脱を通過し、香りは紹興酒の香り。甘み、酸味ある。紹興酒より甘みが強い。
  • 那賀酒造(徳島)旭若松純米無濾過生詰
     揮発成分が強く、口元に近づけるとクシャミが4回出た、香りではない何かがある、愛知の有名蔵の酒以来2度目の経験。濃醇な厚みのある酒

次第に夜も更け、一人また一人規定量に達した方が、自主的にお休みになる、幹事さんは明日の運転もある、二日酔いも許されない厳しい世の中であるから、お休みになる。スロースターターのI氏が絶好調である。S氏は変わらぬ淡々とした飲み口である。未開封であった旭 若松も封が切られる。
筆者も規定量に達したので、宴会場の片隅に布団を敷き、眠ることにする。
布団に入れば、直ちに快い眠りである...。

報告:Y

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