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日本酒の会 sake nagoya 「知多蔵見学」の報告Part2

日程 2006年12月10日(日)
酒蔵 原田酒造(愛知県知多郡東浦町生路坂下29)


昨日は、良い酒ばかりだった。気持ちよい朝を迎える。
昨夜は天気も悪く暗くなってからの到着で気づかなかったが、紫色の朝靄の中、遥かかなたの対岸に、火力発電所と風力発電所の大きなプロペラがゆっくり回転しているのが見える。8時の朝食まで少し時間があるので、『潮騒』有名な神島が見えるという牛取公園まで歩いてみた。
宿のある前浜から5分も歩くと砂浜は岩礁地帯となり、道は高台に登っていく。夏に来たときには愛知県には珍しいミンミンゼミの大合唱だったが、もうすっかり冬景色。朝日の昇るころには、15キロほど先の海上に神島が見えた。道沿いに続く弘法さまにそれぞれ花が手向けられているのに感心しつつ宿に戻った。


渥美半島から登る朝日

神島


一行11人は、昨夜、知多半島7蔵の米のジュースは飲んだが、飯は食べていない。通常の朝食以外に昨夜の鯛があら煮となり登場。平均2杯のごはんを食べ、島を後にした。


師崎から目指す蔵浦までの道では、お決まりの魚太郎に寄る。珍しい魚はないが確かに安い。H氏はカツオを5本お買い上げ!!どうするのだろう。


今日お邪魔する原田酒造は、安政二年(1855年)創業で「生道井」や「衣が浦」の銘柄で知られ、東浦町にある。ホームページを拝見すると杜氏は新潟県出身。昔ながらの杉の甑で米を蒸し、手をかけ醪を育て、槽で搾るという手造り重視の昔気質である。平成17年度には、名古屋国税局酒類鑑評会や県酒蔵組合連合会主催の清酒きき酒研究会での入賞があり、技術力も確かなようだ。特に本会としては「衣が浦若水/特別純米原酒」が平成18年9月の定例会で「豊杯/純米吟醸」などを押え一位となったことは記憶に新しい。
さて今日は蔵開きだ。この時期各地の蔵で行われる行事ではあるが、書斎派こと私にとっては始めてのことだ。試飲は湯飲みでするのだろうか。バンドの演奏とかアトラクションはあるのだろうかと勝手な期待が膨らんでくる。
すごい人だ。蔵の場所を調べるより、駐車場の場所をよく聞いておくのだった。苦労して車を止め、なぜか足早に原田酒造に向かう。人だかりのできた門の中には販売所や試飲コーナーだけでなく、豚汁や甘酒を振舞うコーナーまである。どこも大盛況だ。


早速、受付で、製造部の櫻井さんをお願いする。
「お忙しいところすみません。よろしくお願いします。」
櫻井さんには、蓬莱泉の遠山さんのご縁で何度か定例会に足を運んでいただいている。
「お待ちしていました。こちらへどうぞ。」
あとに続き蔵に入る。蔵は、コンクリート造りの新しい建物で、中には1500キロのタンクが林立している。奥のタンク横の梯子を上がりタンクの中を覗き込む。かなり発酵が進んでいる。しかし、隣の1本はもうからっぽ。
「こちらは、今年仕込んだものです。空のものは今日丁度、槽で搾っています。あとでご覧ください。」誰かが尋ねる。「年間どれぐらい造るのですか」「年内に4本上槽します。今年は14、5本仕込む予定で、製造量はだいたい200石です。」200石といえば1升ビン2万本。合計金額を考えるとなかなか厳しい商売だ。
今度は私だ。「原田酒蔵さんは若水の印象が強いのですが、若水の感想はどうでしょうか」偉そうなことを訊いてしまった。
「常滑で栽培してもらっている若水を使っています。でも若水の精米は、60%が限界です。それを越えると割れてしまいます。高精米には不向きで扱いづらい米です。」
「熟成にはどうでしょうか。」誰かが尋ねる。
「熟成には向きません。貯蔵しておくと夏ぐらいまではいいのですが、だんだん甘い味がのってきて重くなります。」難しいものだ。
「仕込水はどんな水なのでしょうか。」「生道井の仕込水は、リンなどのミネラル分が多い硬水です。ミネラル分のため大変よく発酵が進みます。」


「次は搾りにご案内します。」試飲コーナーの脇から上がり槽を見せてもらう。いくつかの蔵で槽を見せてもらったが、実際に搾っているのを見るのは初めてだ。
槽は上の方が木枠で、下の方はコンクリート、長さは3mぐらいある。中には白い化繊でできた袋が2つ折にされ、プリプリした感じで槽の上まで積まれている。
「朝から2時間ぐらいかけて詰めました。250袋入っています。今は、自重で酒が流れ出していますが、一段落したらフタを置き2日間かけて搾ります。そのあと積み替えまた搾ります。最後は下のセメントの部分だけの厚さになります。」
誰かが聞く「ヤブタだとどれぐらいで搾れますか。」
「ヤブタなら1日です。最後は袋の酒粕をはがす工程があるのですが、その工程も槽は大変です。原田酒造では、若水しぼりたてなど3銘柄は槽ですが、あとはヤブタです。」
多分ヤブタは槽より酒化率が高いのだろう。しかし、『純米のすすめ』などの著書で知られる上原浩氏によると、あまり酒化率を上げると酒のガラが悪くなるとのことだ。しかし、以前、鷹勇の中垂れと純米を飲み比べたときには、搾りの最初から最後まで入った純米の方が、こくがあったと思う。


この槽で酒を搾る。
桜井さんの丁寧な説明を聞く参加者

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(WMV形式 470KB)


「搾りたてです。どうぞ。」試飲コーナーの人が勧めてくれる。運転手役のI氏とH氏の顔が見えたが、遠慮なくいただく。
透明のカップに注がれたお酒には、まだ霞のように滓が漂っている。フナ口からどんどんタンクに酒が流れ出す。それを酌んだばかりだ。数年寝かせた酒を飲むことが多いが、この酒はこの時期だけだ。とりわけ槽口から流れ出たばかりの酒ともなれば感激である。「フレッシュでいいですね。」思わず言葉が出る。炭酸のピリピリ感とともに米の持つ甘味などが口の中で弾ける。来てよかった。


次々に見学者が来るので、名残惜しい(?)ところであるが試飲コーナーを離れる。
「こちらは甑です。」今まで伺った蔵では、アルミ製の甑を使用していたが、ここは杉の甑だ。甑は毎回乾燥蒸気にさらされ痛みやすいと思うが、もう修理できる職人もいないかもしれない。
表の広場に出て、蔵開きの賑いの中、おいしい甘酒をいただき見学を終えた。



放冷機

ヤブタの搾り機


数年前、若狭にある早瀬浦にお邪魔したことがある。この蔵も小さな蔵でほとんど家族だけでお酒を造っており、蔵元の三宅さんは、私もラベルを貼ったりしているのですよと笑顔で話してくれた。この蔵は小さな蔵であるが、雑誌などで時々名前を見かけることを思うと全国区かもしれない。
全国の人に名前を覚えてもらうこと。このことがよいことかは分らない。売れるとは、つまり私のような通りすがりの客の注目を受け、ブランドとして消費されていくことだからだ。たとえ地元の人しか名前を知らず、地元しか飲む人がいなくても、十分美味しければそれでよい。地域の中心として蔵が存在し、地元の人に愛されることが大切だからだ。原田酒造は、東浦の中心に位置し、今日も多くの人々が集まっている。また近くのJAの協力も受け行事を行っているところを見ると、地域の中心としての役割を果たしているようだ。
しかし、既に原田酒造は、昔気質に槽で搾っているものの、近代化された建物で多くの人を雇い酒を造っている。蔵として存続していくため、今後どんどん前に進んでいくのだろう。発展を祈りたい。
1年前、原田酒造の名を会では誰も知らなかったが、今では合宿に参加した11人、そしてこのレポートを読む人、又9月の定例会に参加した人が、櫻井さんの顔とともに生道井の名前と味を知った。もっと多くの人が生道井の名を知る日も近いようだ。
蔵開きで大変お忙しい中、熱心にご説明いただいた櫻井さん、また今回の見学を受入れていただいた原田酒造さんに感謝したい。


桜井さん、ありがとう


われわれは、蔵開きの賑わいをあとに、それぞれ小さい蔵であるが個性的な、二つの蔵について語りながら家路についた。

最後に今回の見学を受入れてくれた天埜酒造さん、原田酒造さんには改めてお礼申し上げたい。

報告:T

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