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日本酒の会 sake nagoya 「酒蔵見学」(鹿野酒造)の報告

とき:2010年2月20日(土)
酒蔵 鹿野酒造(石川県加賀市八日市町イ6)
http://www.jokigen.co.jp/
宿泊 民宿「與市郎」(氷見市窪2557-2)
https://yoichirou.com/

一通り蔵の中を案内いただき、次に向かったのは蔵の裏手。
扉を開けると、そこには一面の田んぼが広がっていました。
実はこの田んぼ、鹿野酒造さんが酒米を自社栽培をしている場所なのだそうです。
育てているお米は酒米の王様「山田錦」です。
社長のお話では、自社栽培をしている山田錦の今年度の検査成績は特等を取っており、兵庫県から購入している同様の特等山田錦よりも自社栽培したお米のほうが品質がいいと自信を持たれていました。
自社栽培では多くの量を造ることは出来ませんが、こだわりをもってお米を造っているそうです。
この自社栽培の山田錦は自社の大吟醸など最高クラスのお酒に使用しているそうです。

また、田んぼの奥には常きげんの仕込み水である白水の井戸が見えます。
この井戸は古くは蓮如上人ゆかりの井戸として使われていたそうで、白山の雪解け水が水源となっている軟水の水です。

蔵の裏手

田んぼの見学の後は、蔵内の応接室で鹿野酒造の酒造りの様子を収めたビデオを見せて頂きました。
地元の石川県のテレビ局が作成して放送された番組でしっかりと長期間取材されており、今回の訪問では見ることの出来なかった杜氏がストップウォッチを持って洗米・浸漬を指示している様子、蒸米を担いで運ぶ様子、麹造りの様子などの作業風景を見ることが出来ました。

ビデオの見学が終わり蔵見学が一段落した所で、試飲をさせて頂きました。
机の上に並ぶのは「常きげん」10種類。
そのうち5種類が新酒、5種類が昨年のお酒で、本醸造から大吟醸までいろいろなタイプのお酒を味合わせて頂きました。
同じ山廃でも濃厚な旨みの純米酒と、酒質は綺麗だが味わいのある純米吟醸など、それぞれのお酒が本当に個性的で、それぞれのコンセプトごとに味を表現しているのが分かりました。

試飲

参加者が順番で利き酒をしている間にも、いろいろなお話を社長から聞くことが出来ました。

まずは、蔵で働く蔵人さんが若い方が多かったのが印象的だったので、その事について質問すると、以前は杜氏と一緒に通いで来るベテランの蔵人の方が多かったそうですが、今後のことも見据えて若手の社員蔵人を雇っているそうです。
そしてその若手の蔵人の方々の大半が、農口杜氏のお酒を飲み、杜氏にあこがれて県外から集まってきたそうです。

また、サッカー元日本代表選手の中田英寿さんが昨年の11月に蔵に訪れたそうで、そのときの様子も伺う事が出来ました。
いま中田英寿さんは海外生活が長かったため、改めて日本の文化へ触れるために昨年から日本国内を旅しており、その一環で各地の酒蔵を回っているそうです。

そのまましばらく歓談していると突然ドアが開き、入ってきたのは農口杜氏でした。
蔵見学の最中には姿をお見かけしなかったので、本日はお会いできないだろうと思っていたのですが、日本酒の会のメンバーが見学にきているので、時間を割いて会いに来て頂けました。

農口杜氏

【農口尚彦杜氏】
古くより「能登杜氏」で知られる、石川県は能登町の生まれ。
昭和24年静岡県の酒蔵を振り出しに親子三代にわたる杜氏一家として昭和38年に杜氏として就任。
酒造り60年の熟達者として輝かしい実績を残し、中でも全国新酒鑑評会において、連続12回、通算25回の金賞受賞に輝き、古今類例を見ない栄誉を受け、他の追随を許さない酒造りの名人として広く知られております。

さらに平成18年(2006年)に卓越技能者に贈られる「現代の名工」に認定され、厚生労働大臣から表彰されました。
更に、平成20年春には「黄綬褒章」を受賞するという栄誉を受けました。
特に農口杜氏の得意技である山廃仕込は青年期に老丹波杜氏より伝授された技術で無形文化財に値する秘伝でございます。
(鹿野酒造HPより)

あこがれの名杜氏の登場で、会のメンバーも興奮気味。
ツーショットの記念撮影を申込む参加者にも嫌な顔もされずに対応していただきました。
さらにメンバーの質問にも気さくに答えていただき、いろいろなお話を楽しく伺う事が出来ました。

会のメンバーも興奮気味

「菊姫」と「常きげん」では味のタイプが異なる印象を受けたので、
以前杜氏をされていた「菊姫」と、「常きげん」での造りの違いについて質問をすると、
「この地域は綺麗な酒を好む土地柄なので、菊姫の頃より綺麗な酒を造っている。この地域のお客様の好みに合わせて酒を造ることが大切。菊姫と同じ味のお酒を造るのではなくて、この地域の気候・風土・米・水などを活かした酒造りをしている。」
との事でした。

試飲させていただいたお酒について、それぞれのメンバーが好みのお酒を伝えると、
「お酒は嗜好品なので人それぞれ好みは違うと思いますが、ここに並んでいるお酒はそれぞれ造り方や味も違います。みなさんが気に入っていただくお酒がこの中にあると思いますよ。」
とオススメしてくれました。
確かにメンバーの好みもバラバラでしたが、本当にそれぞれのお酒に個性が感じられ、杜氏の言葉が印象に残りました。

アルコールの添加についての質問では、
「お酒は純米酒でなくてはと言う考えの方も居ますが、アルコール添加による意味(効果)も有るので、造り方の方法の一つとして利用しています。一つは、酒質が安定して純米よりも品質の管理がしやすくなる事と、もう一つはアルコールを加えることで、もろみの状態の時に出ている良い香りを、搾った後のお酒に残し易いからです。」
というように増量の為ではなく、味を調える為の技術的な面で利用しているそうです。

試飲酒の中にあった大吟醸の味についても説明頂きました。
「造ったばかりの大吟醸は、まだ味が荒く飲み込んだときに喉に少しピリピリとアルコールの感じが残ります。もう少し熟せば気品のある味のうまさがのって、飲み込んでもするとっ喉を通るよいお酒になります。」
そして比較するために蔵の冷蔵庫で熟成させていた大吟醸も少しだけ味見をさせて頂けたのですが、本当に熟成による旨みが増していますが上品さは残っている美味しいお酒でした。

また、農口杜氏は下戸でお酒は飲まないと言う事も教えていただきました。
もちろん仕事で利き酒はしていますが、自分にとっての酒は、飲むものじゃなく造るものとおっしゃっていました。
その代わりに、お客さんの話もよく聞いて酒造りの参考にされているそうです。
「お酒はお客さんに喜んで貰う為に造っています。一人でも多くの方に飲んで貰い、美味しかったと喜んで貰えるのが一番嬉しいです。そのために自分は一生懸命お酒を造ります」とお話くださいました。

話は尽きないのですが、今夜の宿のある氷見への列車の時間もあるので見学はここで切り上げて、蔵の玄関で農口杜氏と全員で記念撮影を取らせて頂きました。
そして今夜のお酒と、自宅のお土産用に「常きげん」のお酒を購入して蔵を後にしました。

甑倒しは終わったとはいえ造りで忙しい中、鹿野社長には直々に蔵をご案内頂き、農口杜氏もお会いすることが出来、充実した蔵見学となりました。
鹿野酒造のみなさま本当にありがとうございました。

記念写真

 

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