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日本酒の会 sake nagoya 「酒蔵見学」報告(浪乃音酒造)の報告

とき:2009年2月28日(土)
酒蔵:浪乃音酒造(滋賀県大津市本堅田1-7-16)
宿泊 旅館やまつね(滋賀県大津市今堅田3丁目21-14)

 

<1日目>

今回訪れた浪乃音酒造は琵琶湖の西岸、琵琶湖大橋に程近い堅田という地にあります。
この地域は、その昔、「湖族」と呼ばれるいわゆる集落があった土地で、その歴史は『湖族資料館』で知ることが出来ます。

湖族資料館

また、近江八景「堅田の落雁」で名高い『浮御堂(寺名:海門山満月寺)』も近くにあります。

浮御堂

浮御堂2

浮御堂は、平安時代、恵心僧都が湖上安全と衆生済度を祈願して建立したといわれ、境内の観音堂には、重要文化財である聖観音座像が安置されておりますので、蔵を訪ねる際には、立ち寄ってみるのも良いかも知れません。

さて、そんな魅力ある堅田の地で酒造りをする浪乃音酒造㈱は、創業1805年(文化二年)と200年の歴史ある酒蔵です。

浪乃音酒造

 

そもそも、報告者のHが最初にこの蔵に興味を持ったのは、酒瓶の裏書きにある杜氏名です。
普通、杜氏の個人名が記されているのですが、この蔵のお酒には『3兄弟』と記されています。
毛利元就(もうりもとなり)で有名な「三本の矢」ではありませんが、兄弟3人、力を合わせて醸されているお酒なのです。
今回、我々を出迎えてくれたのは、長男で社長の孝さん。十代目蔵元でもあります。
蔵へ訪れたときには既に“甑たおし”の後で、ちょっとホッとしたような雰囲気もありましたが、温かみと活気のようなものを感じずには要られませんでした。

平成8年に建てかえられた今の蔵は、鉄筋3階建てと近代的な設備でありますが、印象的だったのは、とにかくきれいであること。床も機材も整理され、ピカピカでした。
能登流の名杜氏である金井泰一氏のもとで、七年間酒造りを学んだ後、3兄弟で造りを行うようになって、八造り目(13BY~)との事ですが、3人の妥協の無い精神が、この綺麗な蔵に表れているように思います。

先ず、最初に案内されたのが、分析室。

分析室。

手作りの小さな酒蔵ですが、ちゃんと分析室もあります。
中井社長はデータ管理をしっかりされる方で、金井杜氏の元で造りを学んでいた頃から続くデータ管理が今の酒造りに生きていると仰っていました。

次に案内されたのが、2階の醪タンク。

2階の醪タンク

タンクに登る

タンクの中

これが実に旨い!!           
最初に味見させてもらったのが、山田錦35%の純米大吟醸です。
香り系の「明利(メイリ)酵母」を使用していますが、嫌味のない上品な香りです。
個人的には、このほかに雄町が非常に楽しみです。

続いて案内されたのが、蒸し場。

蒸し場

数日前に甑倒しも終わっており、綺麗に片付けられて広く感じました。
ここでは、兵庫県産の山田錦35%を見せてもらいました。

山田錦35%。

今年の山田錦はいつもお願いしている兵庫の精米所が火事で焼けたため、
長野の精米所に変えたそうですが、どうもこっちの方が精米レベルが良いとの事。
・・・って事は今年の味は期待できる?!

次に案内されたのは、3階の麹室。

麹室

麹室2

3階では麹室を中心に麹つくりや、酛関係の作業が行われます。
この完備した麹室は、新しい建物とともに作られ、乾燥気味でとても麹が造り易いとのことです。
室は年に何回も燻蒸され、管理には細心の注意が払われています。

ここでは、種麹(もやし)を見せていただき、一部の方は味見していました。

種麹(もやし)

数日前に甑倒しも終わっており、綺麗に片付けられて広く感じました。
ここでは、兵庫県産の山田錦35%を見せてもらいました。

山田錦35%。

この蔵の大きな特徴が、麹室の横にある立派な休憩室です。
休憩室というより、ここで生活が出来てしまうほど、炊事場から寝室まで備えた「家」です。
3兄弟以外に従兄弟も蔵人として働いていますが、この蔵のまかないなどの世話は、奥様方が交代で行い、シーズンともなれば家族総出で造ります。
造りの間は、この休憩室で子供たちも含め全員で夕食を囲むとの事。
「和醸良酒」という言葉がありますが、家族の和が良い酒造りへ繋がるという中井さんの思いが、こんなところにも表れている感じがします。

最後に見せてもらったのが、絞りと瓶詰めの行程。

ヤブタ

槽

搾りは槽(ふね)とヤブタ式と両方あり、槽は吟醸酒、ヤブタは主に純米酒で搾るようです。

さて、蔵見学の後、いよいよお酒を利かせて頂くことに...。
場所は蔵から歩いて1分のところにある、別邸の「余花朗(よかろ)」。

余花朗

余花朗 庭

昭和7年に建てた庵は、こじんまりとして、それでいて趣深い建物です。
琵琶湖を望む庭園は見事に手入れがなされています。
八代目当主が俳句を嗜む方で、この庵の名はその俳号「余花朗」より付けられました。
高浜虚子とも親交があったそうです。

俳号「余花朗」

今年の造りのお酒(生原酒ばかり)を6本用意いただき、思い思いに利き酒開始。

試飲

どれも、香りがふくよかで、口中のふくらみと後口のキレは、かなりのものでしたが、個人的には、本醸中汲みが一番広がりがあって旨い!と思いました。

この蔵のお酒は、今現在かなりのレベルにあると思いますが、今年は凄く期待です。
その理由は、仕込み水にあります。
この蔵の仕込み水は市水を使っており、それを4回ろ過して酒造りをしていました。
しかし、今年は水道管にある装置を取り付けて、水の活性化を図っています。
これにより、水のクラスター(粒子)が最小化されるというものです。
水のクラスター(粒子)は、通常の水道水では大きなものとなっており、これを何度ろ過しても不純物は取れますが、クラスターは大きなままです。
しかし、今回取り付けた装置を通すことによって、分子一つ一つに共振共鳴を起こし水を活性化させることで、水道水を山の湧き水と同じようにクラスターを小さく戻すことが出来るそうです。
実際、導入後の今年の造りは、水の吸収率があがり米の溶け方が画期的に変わったとのことでした。

家族による手作りにこだわりながら、データを重視し常に改良を加える。
真摯でひたむきな酒造りに対する姿勢は、これからもっと良くなっていくことを予感させる、今回の訪問でした。

 

記念写真

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