top>体験報告>2006/3/19

2006.3.19 日本酒を飲む会-「隆」を飲む-に出席しました。

 

ごとう屋&酒屋はやしさん主催の日本酒を飲む会に出席した。会の出席者は15名。と言ってもごとう屋さんの息子さんや林さんの奥さんなど関係者を含めてで、さっぱりしたものである。

今回のテーマは「隆」。神奈川県山北町から川西屋酒造店の蔵元露木さんを招いての会だ。神奈川県の酒というと書斎派程度ではせいぜい湘南の「天青」ぐらいしか思いつかない。その神奈川県で10数年前から足柄産「若水」の育成に熱心に取り組み、県内最初の酒造好適米の誕生に貢献。「丹沢山」という銘柄を発売しているようだ。ネットで検索するとヒットが多く関東地区の注目銘柄というのも肯ける。
また「若水」というのも気になる。愛知県内では、近頃「夢山水」の人気が高まり押され気味の観は否めないが、この米は昭和58年に県農業総合試験場で500万石と玉栄系の米から誕生した銘柄で稈長の低い特色を持つ。長珍の酒でもわかるようにこの米は一癖ある。

さて、会である。今回の出品は、

  1. 隆 純米吟醸 若水 生原酒 17BY 55% 701号系
  2. 隆 純米吟醸 阿波山田錦 生 17BY 55% 9号系
  3. 丹沢山 純米 阿波山田錦 生原酒 17BY 65% 9号系
  4. 丹沢の華 大吟醸 播州山田錦 生原酒 17BY 35% 9号系
  5. 丹沢山 純米 阿波山田錦 生 15BY 65% 9号系

だ。

主催者挨拶が終わり、先ず、a を飲む。幅のある深い味、渋さに特色がある。
「この酒は若水で作りました。若水は心白が割れて溶けやすいんです。溶解すると変な味が出るので、よく米を締めてやる必要があります。」露木さんが言った。
「この酒は、酸味に特色があるのでしょうか。」書斎派が訊いた。
「確かに酸度は1.9から2.0ぐらいあります。酸が低いと味がボケてしまいます。酸には酢酸、リンゴ酸、乳酸などがあるのですが問題はこのバランスです。麹の作りから気を使いきれいな酸を心がけています。酒造りは教科書どおりに手を抜かずに造ると案外いい酒ができるのですよ。」
濃度のあるクリーンな旨み。きれいな酸を作り出すには、30分間隔の温度管理のように如何に手間暇をかけるかがポイントらしい。

次に b を飲む。山田らしいエレガントさはあるが、これも旨みがあり酸味がきき切れの良い酒だ。「この酒も苦いのでは?」書斎派が尋ねた。
「渋味と苦味は違います。これは渋味です。渋味は味のりでマスキングされますが、苦味は消えません。」ごとう屋さんの弁だ。
「出品酒は、5月がピークになるように造りますが、これは秋上がりを狙っています。最初、バランスが悪くても味がのれば大丈夫です。渋いと濃い味の料理や脂っこいものにも合います。阿波山田を使うのは、阿波山田の方が兵庫に比べ米が硬く造りやすく味のりもしやすいからです。」
「どうして隆なんですか。」誰かが訊ねる。
「隆は隆起の隆です。一つの銘柄は1本のタンクだけから作ります。まさに限定酒です。ひとつとして同じもののない人生同様、タンクごとの個性を楽しんでください。自分たちは毎年、前年の経験を生かし、その上に更にひと工夫、ひと手間を加え、持てる力を出し切って醸しています。常に進化し、挑戦の意思を込めた酒が隆です。隆起し続ける酒なのです。」力強い説明だ。

ここで、ひと休み、仕込み水をいただく。「仕込み水は丹沢の湧き水です。花崗岩を潜ってきた水で硬度5、中硬水です。あまり軟水だと味を出すぎキレがなくなり、酒だけ飲むと飽きがきます。かといって切りすぎると焼酎のようで美味しくありません。」なかなかバランスが難しいようだ。

次に c の丹沢山をいただく。
隆と丹沢山の違いは、もともと隆は60%以上の精米、瓶貯蔵とのこと。一方、丹沢山は、タンク囲い。今は丹沢山のレベルが向上し、差がわかりにくくなっている。
この酒も味がのり、酸に特色がある。すっと味が引いていく印象がある。しかし、まだ硬い印象がある。今後、熟成を経てさらに美味しくなる酒のようだ。

次は一つとばしてe。今までと同様の傾向であるが、少しクリーミーな匂いがする。

最後に d の35パーセント。書斎派には少し味が少なく淋しい。ごとう屋さんによると、少し味が閉じているとのことだ。瓶を逆さにし振って飲む。

隆については、全体に値段が高く、書斎派には手が出なかった。しかし、丁寧な造りを心がけていること、高い志を聞き納得。また実際飲み、味ののりは当然として上品な酸ですぱっと切れるところや渋味に大きな魅力を感じた。一度、悦凱陣と飲み較べてみたい。

さて、今回の会では、主催者のごとう屋さん&酒屋はやしさんから7月17日(月・海の日)に名古屋観光ホテルで「なごや純米燗・夏の宴」を開催するという話があった。一昔前まで、酒というと燗酒と決まっていたと説明があったが、ことは美味いか不味いかである。あるミュージシャンがジャズにおける黒人白人の差について尋ねられたとき「宇宙人でも上手ければよい」と答えたそうだ。至言である。美味ければよいのだ。
インドより熱い名古屋の7月に20社以上も蔵を集め燗酒を飲む。なんともあつい企画だ。純米という部分もそそられる。
尾瀬あきら氏を代表発起人として開かれるこの会の成功を祈っている…などと話していたら、「書斎派さん手伝って!!」「エッ」「だって日本酒愛してるって言ってたでしょ。作り手と話ができるし。ブースに立っての試飲の手伝いもあるかも。今日みたいに蔵元さんとの二次会も楽しいよ。」「……」
近頃、貧乏だが、世間の景気はよい。会費の11,000円(4月末まで10,000円)も何とか工面できるかもしれない。でも、スタッフは試飲できないのでは…不安だ。

スタッフ希望者は、栄の酒屋はやし(052-962-3061)さんに連絡してほしい。
チラシはこちら

さて、次のごとう屋&酒屋はやしさんのプロジェクトは、4月29日の長珍の見学である。こちらも希望の方は主催者に連絡いただきたい。

報告:T