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2007年4月22日(日)小左衛門試飲会に行ってきました。

中島醸造株式会社(岐阜県瑞浪市土岐町7181-1)
https://kozaemon.jp/

【感想】

  1. 小左衛門試飲会について
    中島醸造は、創業元禄十五年以来の歴史を持つ酒蔵であると同時に新しさを感じる蔵である。それは、現在の当主、杜氏が若く、旺盛な活力を持っている事から来るものであろう。
    俳諧に不易流行を唱えた芭蕉の主張の通り、伝統・古さの中に新奇・現代的を持つことが、日本文化の伝統の中にある日本酒・蔵にも当てはまる。この蔵は、古くそして同時に新しいのである。
    1年前の蔵見学の際、18BYは手元に酒を残して、イベントを考えたいとのお話であった。それから1年後、確かに試飲会が開催された。試飲会は期待に違わず内容の充実したものであり、通常の蔵開放・蔵見学といくつかの点で異なっており、筆者にとって新鮮な体験となった。異なっている点を整理すると次のようになる。
    1. 蔵の全体像の提示である。
      通常の試飲会では、しぼりたて新酒だけまたは数種類の試飲にとどまり、蔵が醸している酒の全体像は掴めない。配布された資料によると全商品の銘柄数は50強だが、直汲、袋吊斗瓶はバリエーションのため、31種類の試飲はこの蔵の全体の試飲と考えることが出来る。
      全体を提示する試飲会は、酒販店向けに開く蔵があるようだが、一般に開放する例は知る限りでは無い。尤も、この会も午前中は、酒販店向けの説明会・試飲会になっている。このような企画が一般に開放されることがもっとあっても良いのではと思う。とどのつまり、最終的に飲むのは、酒販店でもなく、飲み処でもなく、消費者なのだから。
    2. 試飲会というより利き酒会である。
      試飲会の一般的イメージは、しぼりたての新酒を提供し、併せて即売を行うことである。重点はむしろ即売にある。典型的な例は、I醸造であろう。毎年2月の毎週、蔵開きが行われ、会場には菰樽3種類が置かれ、自由に飲むことが出来る。参加者もただ酒で酔う目的の人も多く、つまみ持参の人もいる。会場は酔っぱらいが、ここそこにいて大声を上げている。一方、玄関近くの即売場は、人でごった返しており、多くの人が買い求めている。
      この即売場を通過しなければ、試飲の会場に行けないし、試飲の会場から外に出るには、即売場を通過しなければ出られないのである。蔵開きではあるが、内実は即売会である。
      I醸造は鑑評会入賞の酒も醸しており、酔う目的でなく参加する人は、関心が有るのだがそのクラスの酒の試飲の機会は提供されていない。
      小左衛門の試飲会は、即売はないのである。全体が掴める銘柄が試飲できるのである。
      熟成過程にある銘柄も試飲が出来るのである。日本酒愛好家にとって有難いことである。
    3. 蔵の丸抱えである。
      上に述べたように、即売していないので、イベントの売り上げはゼロである。通信・宣伝・手間・試飲酒等の経費はすべて蔵が負担、午前中の酒販店向けは知らないが、午後の一般向けは参加費無料である。それでは、蔵が損であると思えば、このような企画は実行されないだろう。筆者はすでに、純米吟醸(仕込み47号)を購入したし、その後の目星は付けている。当日の売り上げが無くとも、蔵が長期的に損とは言えないだろう。
    4. 参加者の目的
      この会には、ただ酒で酔う目的で参加していた人はいない。会場で、酔っぱらい状態の人はいなかった(時間が4時間あったら、どうかとの陰の声もあるが)。
      日曜日に、足を運んで、今年の小左衛門を理解するために来た人達である。つまり、同好の士である。日本酒の会のメンバー、酒販店、割烹の主人、有名日本酒サイトの管理人ご一家etc。目的は一つである、語らずとも、気は通じる。旧知の如く意気投合出来る人達が集まっている。その意味では、普通の人達ではない。

      新しい体験のできた試飲会であり、このような機会を提供いただいた蔵元に感謝するのみであるが、敢えて駄々を捏ねれば、酒販店向けにあったらしい説明の場があると有難かった。新しい造り(米、器具、酵母etc)に関心のある普通ではない一般人が参加しているのであろうから。
      この企画は、来年も是非開催していただきたいものである。

  2. 利き酒の方法
    筆者は、単なる日本酒好きであって、日本酒を生業にしている者ではない。試飲の際は、飲むことにしている。美味しい酒を喉に通すのは当然である。しかしながら、大規模な利き酒会では、喉を通すことは出来ないだろう。今回も、2時間で31種類はなかなか大変である。恐らくこれが限度と思われる。今回の会場にも、口に含んだものを吐く器が用意されていたので、酒販店の人達は喉に通さない人も多くいたのであろう。
    飲み込まずに利き酒をする術を知らない筆者は、飲み込まなくては本当の味はわからないという思いと100種類飲んで利き酒が出来るかというジレンマの中にある。
    誰か良い方法を教えて欲しい。
  3. 土岐川と蔵の風景
    駅から歩いて、蔵に向かうと、中島醸造は土岐川の向こう岸になる。町並みを通り抜け、川岸に出ると、視界が開け、明るい風景の中に、始禄の白い文字の蔵が目に入る。
    蔵は、多くの場合昔からの街の中にあることが多く、古い町並みの中では、広さ・明るさを感じる事は多くない様に思われる。中島醸造の風景には、それがある。道筋にも、蔵の中庭にもそれがある。それは、恐らくこの風景の中で醸された酒の中にも入っていることだろう。
    春雨の帰り道、橋を渡りながら、土岐川と蔵のある景色に目をやりながら、想った。
    この景色は、これで一つの絵であるがもう一つ足りないものがある。それは、桜並木である。橋の袂の数本の桜は、花を散らし、若葉が雨に光っている。晴れた日莢かな風が吹けば、桜の若葉の香りを運ぶであろう。桜と日本酒は切り離せない。
    土岐川の堤に、桜を植え、桜並木が上から下まで連なる風景になれば、その絵は華麗さを増し、情緒に溢れたものになる。その絵の中で、「小左衛門 純米大吟醸 うすらひ」を酌むことができれば、花と酒を楽しむ花見客が土岐川と蔵の風景に、加わることになる。
    そこには、元禄花見踊りの三味線が流れている...
    小学校の野外活動、青年会議所、ライオンズクラブ、篤志家の人達が、その絵を実現してくれないだろうかと夢想してしまうのである。
  4. 花雑句
    小左右衛門について、まだ目にしていないものが2つある。
    一つは、庭の主榎。木が枝一杯に葉を広げた姿をまだ見ていない。梅雨明けが好時節であろうか。
    今ひとつは、蔵内レストランの仙橘軒。一日限定一組である。小左衛門・始禄が勢揃いした今が良い季節なのだが、5月中は満席とのこと。
    予約するには、仲間を募るか、家族で行くか決めなければならない。

    元禄の花見にゆかん小左衛門

    主なり神木萌え出す蔵の庭

    五月中予約満席仙橘軒

    寒造り四十七士の名は始禄

    花の後雨に降らるる堤かな

    春雨や心づくしの酔い心地

(報告 Y)