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2007.10.6(土)愛知県酒造技術研究会の松尾大社参拝に参加しました。

 

愛知県酒造技術研究会の松尾大社参拝に参加させていただいた。この参拝には、研究会の遠山さんのお誘いで日本酒の会酒なごやからは6名が参加した。

参拝は、バスツアーで、松尾大社参拝、昼食、湖東三山の一か所を訪問という流れだ。昨年は、初めての参加で、大変緊張したが、今回は見知った方も多い。リラックスして参加できた。

8時15分名駅西口をバスで出発。さっそく研究会会長の蓬莱泉遠山杜氏からのあいさつである。安全によい酒を造ることや昭和30年代から恒例行事としてとして行われていることなどの説明があり、日本酒の会のご紹介までいただいた。

前回は、バスの中で飲み、参拝。昼食で熱燗。帰りのバスでもまたお酒という夢の奈良漬ツアー。まだ、一宮インターにも着いていないのに…と密かに心配していると会長からご発言。

「今から飲んでいてはもたないので、参加者は自己紹介をお願いします」

そうだ。それがなかった。事務局の食品工業技術センターの西田さんから素早く参加者名簿が配布される。

今回の参加者は26名。内訳は蔵関係者が9蔵11名、酒造関係のメーカーが6名、酒造コンサルタント、大学関係1名、食品工業技術センター1名、日本酒の会が6名である。それぞれユーモアに満ちたあいさつが続く。あいさつを伺うといくつかの蔵では1月ぐらい前から仕込みを始めているとのこと。そうだったのか。

そうこうしている内に後部座席を見るとサロン状のテーブルのセットが始まっている。いよいよ各蔵自慢のお酒の登場である。

レポーターはお酒は弱いので自重しないといけないが、飲むことは大好きだ。連れて行ってもらっている立場も忘れ、重鎮の座るサロン席に突撃。説明をうかがいながらいただいたお酒をスケッチしておく。

  1. 尊皇 愛知米10割夢山水が中心とのこと。まだ若いながら味がのってきている。
  2. 神杉 夢山水50% 斗瓶取り 出品酒として準備したお酒とのこと。米の甘みは強いが不思議に味はのっていない。聞けば、零下2度で保存してあったそうだ。今月ウォーキングの行事があり蔵開放が予定されているとのことである。
  3. 清洲桜 山田大吟醸 東海4県で屈指の醸造量、7万石を誇るこの蔵はレポーターの自宅に近く場所はよく知っている。清洲桜というとパック酒の印象が強い。今回改めて利いてみると苦みが酒に深みを与えいい塩梅だ。香りが付きすぎているというお話だったが、この味は好みだ。学生時代に飲んだ灘の酒に近い印象。 この蔵はコストを抑える技術だけではないものを持っているのだろう。全国新酒鑑評会ではこの2年金賞連続受賞はだてではない。一度見学させていただきたいものである。
  4. 清洲桜 純米吟醸 夢山水55% この前にきいた大吟醸の印象が強く、少し印象が弱い。
  5. 東龍 生 東龍は山廃で有名な蔵 これは少し薄い印象で残念だった。
  6. 福井酒造 純米吟醸 真 若水とのこと そろそろわからなくなってきた。今泉さんごめんなさい。
  7. 食品工業試験場 夢山水+吟風 コストを抑えるため、夢に吟風を加えたとのこと。香りは穏やかだが味があり渋みがアクセントになっている。もう少しインパクトがあるとうれしい。
  8. 丸一酒造 ほしいずみ 去年この蔵は大変おいしかった記憶がある。今回も甘み渋みともありgood。
  9. 吟醸工房 純吟 山田55% 蓬莱泉はどれをとってもやさしい。少し甘くよく似た香りがある。荒川杜氏作とのことだ。
  10. 蓬莱泉 トンネル熟成大吟醸 穏やかな香り、かすかな苦味飲みやすい酒である。苦・渋や ややこしい味がレポーターは好きだが、これは飲みやすく誰にでも好まれるお酒だ。

今回試せなかったお酒もあると思うがご容赦いただき、参拝する松尾大社について記したい。

 

松尾大社は、お酒の神さまとして有名だが、もともとは渡来民族の秦氏が祀った神である。秦氏出身で特に有名なのは日本史の教科書にも登場する秦河勝である。この人物は、聖徳太子の側近として活躍した人物で、大社近くにある広隆寺を創建している。松尾大社の社殿の造営は、大宝元年(701年)。河勝の時代からは100年近く下っている。
秦氏は山城、河内などあちこちに所領を持ち、養蚕や土木、農業などを発展させたらしい。例えば名神沿いにある秦荘もその一つ。また出身者も多岐にわたり、現代では、民主党の羽田孜氏もこの一族として知られている。

このような背景を持つ松尾大社は、四条通りの西の突き当りというロケーションにあり、歴史のなかでの重みを感じる。昨年同様この時期は、七五三や結婚式で賑わっており、さすが…というところである。ご祈祷まで若干時間があり境内を見て回る。全国の有名どころの菰樽が奉納されていたりお酒の資料館があったりする。 お守り・お札も「酒業繁栄祈祷神腑符」「醸酒御守」うれしいことに「服酒守」までの充実ぶりだ。

しばらく境内で待機した後、脇の建物から拝殿にあがり、ご祈祷をお願いする。巫女さんの舞いの両手を広げての伸び上がるような大らかな所作が印象的だった。
少し酔ってはいたが、一年間息災であったことのお礼を申し上げ参拝を終えた。きっと松尾の神様なら許してくれるだろう。
参道正面で記念撮影ののちバスに乗り込み昼食会場に向う。昼食は約1時間。26人で55本の燗酒をたいらげたとのこと。さすがに酒豪ばかりである。

帰りのバスはさすがに飲み疲れ静かになる。レポーターも一休み。午前中に立ち寄り先と決めてあった湖東三山の一つ西明寺に向かう。紅葉で有名なお寺だ。滋賀県のお寺は、少しシーズンが外れると観光荒れしていない姿を見せてくれる。今回も夕刻に無理やり閉門時間を延長させての拝観で、静かな佇まいを見せてくれた。 紅葉には少し早いが、参道の両側に塔頭跡の石垣だけが残る階段を5分ほど上ると鎌倉時代に建てられた本堂と三重塔がある境内に着く。
西明寺の見どころは、ここに至る参道と三重塔の内部に残されている極彩色の壁画である。湖東三山はどのお寺にも境内に至る静かな道があり、季節を問わず歴史から取り残された姿を見せてくれる。三重塔の壁画は、ハイシーズンのみ限定で公開され間近に仏の世界を楽しむことができる。滋賀県を紹介する文化人では白洲正子氏が著名だが、 氏の紹介する滋賀県は、もう少し古い時代が中心で紹介できないのが残念である。三山が衰微した原因としては信長の焼き打ちがよく知られる。このような姿になったもう一つの理由は、鎌倉時代に誕生した各宗派は人の心の平安とセットとなり発展してきたが、西明寺のような天台系のお寺やずっと古い奈良のお寺などは個人の帰依=檀家という制度を持たない。美しく言えば国家のお寺なのだが、 つまりは封建領主の一種として多くの寺領を背景として存続してきた。このような檀家を持たないお寺は、最終的には農地解放がその息の根を止めることとなった。 大きな観光寺院はよいが、小さいといってもお寺を個人の力で維持していくことは容易ではない。住職や関係者家族の努力を思うと頭が下がる。滋賀県の多くのお寺では、週末でも一日何人の参拝者があるのか心配になる。一時間近く居ても誰も他の人には会わないこともよくあることだ。話がそれてしまったが、すっかり夜の帳に包まれた西明寺をあとにした。

帰り道、遠山さんと日本酒の将来について話した。そのなかで、造りが一段落する来年5月ごろを目途に例えば「愛知の酒を醸す杜氏と飲み・語る会」というようなイベントを名古屋市内のホテルで開催したい。愛知県には良い蔵が沢山あるのだから、直接、消費者の皆さんに蔵を紹介する企画を行いたいと言ってみえた。 確かに近県では静岡のお酒のことはよく聞くが、愛知の酒は少し印象が弱い。蔵の造り手が消費者と直接話せば、お酒に込めた思いを深く伝えていくことができるだろう。日本酒の会酒なごやとしてもぜひ様々な面で協力・お手伝いをしたいところである。愛する日本酒のために何ができるのか。そんなことを考えながら家路を急いだ。

最後に今年も松尾大社参拝に誘っていただいた会長の遠山さん、事務局の西田さん、気持ちよく受け入れていただいた酒造技術研究会の皆さんに感謝と酒造の大成功をお祈りしたい。

(報告:T)