top>体験報告>2007/10/14

2007.10.14(日)酒泉洞堀一の蔵元を囲む会 奥・焚火に参加しました。

 

奥を初めて飲んだとき、印象的な香りと甘みにひかれ、ずっと気になるお酒だったのですが、確か去年、山崎醸造さんを蔵見学した会の先達のHさんから、ベルトコンベアでお米を蒸しているという話をうかがい、「手造りが一番」という信念をもつ自分は、ずいぶん違和感を感じました。今回「やきとり吉兆」さんで蔵元を囲む会が開催されると聞き、是非参加したいと思ったのは、この好感と違和感のギャップが出発点でした。また、Hさんが声をかけてくれたこともあり、今回の会に参加させていただきました。

私が到着した時には吉兆さんには、すでにHさん始め多くの方が集まっていらっしゃいました。私は定例会以外あまりこのような日本酒を飲む集まりには参加したことがないので少し緊張していたのですが、フランクな雰囲気で会が始まりました。

まず最初に主催者の酒泉洞堀一堀一の小久保さんが、挨拶と蔵の紹介をされました。

ご存じない方に山崎合資会社について説明させていただくと、山崎合資会社は、愛知県幡豆郡幡豆町にあります。銘柄としては、従来「尊皇」近頃は「奥」「焚火」が有名です。年間生産量は約1000石で、全量自家精米、普通酒まで手造り麹、仕込み水は三ヶ根山の伏流水(軟水)を使ってらっしゃるとのことでした。反省ですが、手造り麹はどの部分を手造りしているのか、つまり放冷からもやしをつけたあと全く機械を使わないという意味なのかどうかよくうかがうべきでした。

次に蔵元のあいさつ。奥と焚火のコンセプトについて詳しい説明がありました。蔵元の山崎さんはまだ若い方で、感じのよい好青年という印象です。

奥は、地元以外で存在感のあるお酒を造りたかったこと。愛知県の蔵ということから地元の米(夢山水)を使っていること。また、対外的なアピールのため、吟醸香と高アルコール(18度以上目標)を特色としながら酒質が重くならないように注意をしていることなどご説明をいただきました。また、名前の由来は、日本酒の奥が深く、そして日本酒の奥がさらに深くなったと感じられるお酒を造りたいという願で名付けられたとのことです。さらに、2002年10月からの発売されているのですが、蔵としては、流通にも配慮し、温度管理がきちんとできるかなど販売店についても気を使っているとのことでした。

焚火については、もう一つの愛知生まれの酒造好適米「若水」を使い切れの良い食中酒を目指しているとのことでした。

さて試飲です。

  1. 奥 夢山水十割 熟 純米吟醸60 2003BY
  2. 奥 夢山水十割 旬 純米吟醸60 2006BY

    1は、もう蔵にも数十本しか残りのない貴重なもの。2は今年のひやおろし。いずれも火入れですが、この蔵の火入れはプレートヒーター方式。従来の蛇管方式や瓶燗方式に比べお酒が熱にさらされる時間を短縮できるので香りや味に影響が少ないとのことでした。

    1はもっと熟成感があるものかと思いましたら、低温貯蔵のためか、高アルコールのためか熟成が進んでいるという印象は少なく、少しまろやかになっている。香りが少し下がっているというところでした。2はこれは奥全般の印象なのですが、高アルコール感と香りに特色のあるお酒でした。

  3. 奥 夢山水浪漫 生酒 純米大吟醸50 2006BY
  4. 奥 夢山水浪漫    純米大吟醸50 2006BY

    これは、生と火入れの飲み比べです。生と火入れを比べてみると火入れの方がさらっとした印象でした。生ですと香りや味の点で少し煩わしさを感じます。

  5. 奥 夢山水浪漫 熟成生酒 純米大吟醸50 2005BY
  6. 奥 夢山水十割 生酒 純米吟醸60 2006BY

    5は6に比べて角がとれており、まろやかでした。味のりは低温熟成なので生にもかかわらず少しのっている程度です。また全種類でこれだけだったと思いますが、独特の香りがありました。

  7. 全量にごり生 純米吟醸60 2006BY
  8. 一割にごり生 純米吟醸60 2006BY

    蔵元によると7は澱のまろやかさを狙い、8は炭酸ガスのそう快感を味わってほしいとのことでした。濁り酒は色ものとしては楽しいのですが、正直申し上げてあまり美味しいものを飲んだ記憶はありません。しかし今回の7はクリーミーで楽しめるものでした。また濁り酒の燗というのは一般的ではないのですが、ちょっと見た姿は良くありませんがおつなものでした。

  9. 焚火 若水 辛口原酒 旬 純米吟醸60 2006BY
  10. 焚火 若水辛口 特別純米 70 2006BY

    9を飲んでしまうと10は加水がわかるのですが、体には優しいのでしょう。蔵元によると食中酒としてキレの良さと香りを避けたとの説明でした。9よりどういうわけか10の方が渋みはあるのですが、いずれももう少し味があってもよかったのかもしれません。

    ただ、レポーターのように一品ずつ酒の味をみるような飲み方では、どうしても食中酒として適切なすいすいいけるお酒は評価できない傾向がありますので少しフィルターをかけて読んでください。

奥全般については、くだもののような香りがあるため、高アルコールでも飲みやすいのですが、好みとしてはもう少し甘みがあってもよいと思いました。

焚火については、本当に食中酒を目指すならこのような方向なのでしょうが、奥と差別化して、また夢山水ではなく若水なのですから、コクを形作る苦味や渋みなど味にもっと奥行きがあってもよいと感じました。

今回の吉兆さんのお料理は、「名古屋コーチンを一匹まるごと食べちゃう鍋料理」ということで、鳥のすき焼だったのですが、味のある肉と多分たまり醤油を使った割下という組み合わせで素晴らしいものでした。いつもながら吉兆さんの料理は、恥ずかしい言葉ですが、本物の味というものがどんなものかを感じさせてくれます。

企画のなかでは、蔵元さんから高精米した夢山水を持ってきていただき、酒造と同じように蒸してもらいいただきました。酒造好適米は美味しくないという噂があるのですが、低アミロース米、たとえばミルキークイーンのような印象です。なかなか蒸米にふれる機会はありませんので貴重な経験をすることができました。

また、美味しいお酒をいただきながら堀一さんには蔵元さんをご紹介いただき、いろいろなお話をしました。その中で、ぜひ堀一さんに蔵見学を実現してほしいとお願いしたところ、蔵元さんにもご理解いただき1月20日(日)ということで話がまとまりました。蔵元さん、堀一さんはともにお忙しい方ですので、正式の連絡を待たないといけませんが、ぜひ実現してほしいと思います。

最後に今回のすばらしい企画を実施された堀一さん、吉兆さん、最後に山崎さんに感謝申し上げます。

(報告:T)