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2008/9/28(日)、2008/11/9(日) 『第2回滋賀地酒の祭典』に行ってきました。

 

滋賀県の酒というと、10年ほど前に酒販店で印象に残ったできごとがある。なぜ滋賀の酒をなぜ扱わないのか尋ねたときである。
「イメージがよくない」
これが回答だった。 

琵琶湖周辺を旅すると、歴史では奈良や京都に負けないが、観光客は休日でも日に2~3人という社寺が多々ある。私としては、観光荒れしておらず、豊かな時間を思う存分過ごせ、誠にありがたいのだが、文化財を守る立場の方は随分苦労されていると思う。
滋賀の酒も同じようなものである。旅の途中に立ち寄った酒屋で地元の酒を求め、隠れ里を旅するように静かにそして密かに楽しむ酒であった。しかし、近年、滋賀県酒造組合を中心とし多くの取組がなされていることには、目を見張るものがある。東京でのブランドイメージも徐々に確立されてきている。

さて、「滋賀地酒の祭典」である。この催しは、滋賀県酒造組合主催で、今年で2回目だ。予てから滋賀の酒に注目していた私は、少し遠いがこの会に参加することとした。
会は、2日間で構成され、9月28日に「みんなで選ぶ滋賀の地酒会」としてブラインドでのきき酒会。そして、11月9日にきき酒会の結果発表・各酒の公開&滋賀県の全蔵のきき酒会、更に同日に開かれる蔵元とともに楽しむ会となっている。私は、時間の都合から蔵元とともに楽しむ会以外の部分に参加した。

 

<9月28日>
会場の大津までは在来線で名古屋からざっと2時間。周辺には比叡山や源氏物語1000年紀で沸く石山寺など有名どころもある。しかし、県庁所在地ながら街としての大津の印象は薄い。鮒ずしを買いに阪本屋に行ったことがあるぐらいで、大津駅を降りるのは初めてだ。
ここから会場の大津プリンスホテルまでは、シャトルバスで10分である。

大津プリンスの威容に少し緊張して受付に向かうと、滋賀の酒を特集した時に来ていただいた福井さん、中井さん、冨田さんなどの顔がある。
今日の参加者はざっと200人。さすが滋賀県というべきか墨染の衣を着た方も参加されている。

 

早速、主催者の滋賀県酒造組合福井会長からのあいさつから始まった。

出品酒は、全て市販酒で、イ 普通酒の部(33点) ロ 純米酒の部(27点) ハ 吟醸酒の部(21点 )ニ 純米吟醸酒の部(23点)の4部門に分けられている。この室温でブラインドされた各部門の酒を30分ずつきくのである。
具体的には、ブラインドされたビンの前に半量酒の入ったきき猪口が置かれ、スポイトが挿してある。そこから自分の猪口に5~6cc注ぎ、「とても美味しい、美味しい、ふつう、あまり好みでない」の4段階で評価するのだ。注意事項としては、最後に、お酒を必ず吐くこと。確かに飲みこんでいては大変だ。なお、吐きだしても1ccぐらいは飲みこんでしまうとのことだ。
今まで、100種類という数を評価することも、吐きありの試飲も初めてなのでどんなことになるのか楽しみだ。

30分で30点弱をきくのだから、1点1分。スポイトで猪口に酒を注ぐ、口に含みズルズル。そして吐くだけだ。やはり甘いものが美味しい。また、生や香が少しあるものも点数を入れたくなる。逆によく切れていて甘みのないものや渋いものには点数が厳しくなる。少量ずつ口に含み吐くだけので、重いものやサバケの悪いものも気にならない。

この作業を続けていると酔うほどではないが、少しずつ酔いがまわってくる。25分きいて椅子で5分休む。また25分きくという作業の繰り返しである。お酒を楽しむというより、自分の体をセンサーとして使っている感覚で、機械の一部になったような気分だ。私たちのグループ(約50名)は純米→吟醸→純米吟醸→普通酒の順できくこととなった。

4部門の採点が済むと、評価用紙を提出。換わりにブラインドになっていた出品酒リストをもらう。高得点をつけたものを確認しているうちに、蔵関係者との交流タイムとなり、お気に入りのお酒の蔵関係者に話を伺いその日は終了した。

 

<11月9日>
第2部は、参加者の好みで選ばれた結果の発表と滋賀県内の全蔵が集っての300種類以上の地酒の試飲・即売会である。
前回配布された出品酒リストに自分の評価や感想を整理して記入し、今日の結果発表を受けて効率的に試飲できるよう準備を整え会場入り。なかなか試飲の機会のない滋賀の酒だ。気になる蔵については、十分試飲しておきたい。

さて、結果発表である。今回のきき酒はお酒の品質の優劣ではなく、好みを集約したものである。全出品酒の中で総合平均点が1番の酒が「知事賞」、各部門で平均点が上位20%であったお酒が「びわ湖賞」に選ばれた。

 

知事賞

香の泉 天醸(竹内酒造)<吟醸酒の部>

びわ湖賞

<普通酒の部>
富鶴本醸造(愛知酒造)、美冨久山廃本醸造(美冨久酒造)、生原酒月の里(月の里酒造)、御代栄高級仕込(北島酒造)、薄桜特別本醸造原酒(増本酒造場)、竹生嶋本醸造原酒(吉田酒造)、萩乃露上撰(福井弥平商店)
<純米酒の部>
一博純米生酒(中澤酒造)、忍者(瀬古酒造)、近江藤兵衛 純米無濾過生原酒(増本酒造場)、萩乃露 山廃仕込芳弥特別純米(福井弥平商店)、大治郎純米(畑酒造)、松の司山廃純米酒(松瀬酒造)

<吟醸酒の部>
道灌技匠(太田酒造)、大吟醸藤娘(藤本酒造)、大吟醸多賀(多賀)、喜楽長特別大吟醸(喜多酒造)

<純米吟醸>
純米吟醸比叡の寒梅(藤本酒造)、大治郎純米吟醸(畑酒造)、花酵母純米吟醸生原酒(笑四季酒造)、美冨久純吟極醸(美冨久酒造)、香の泉唯醸(竹内酒造)

 

全体の傾向をみると、軟水で仕込んだ酒全般についていえることだが、やさしく穏やかで、米のうまみの味わえるお酒が多い。一方、渋・辛系のお酒は意外と少なかった。また、入賞したものをきいてみると、やはり甘みの強くあり、少し香のあるようなものが多いようだ。

普通酒、純米酒の受賞酒を中心に味を再確認したあと、気になる蔵のブースに向かう。お酒だけではなく前掛けやTシャツなどの小物を売っているところ、熱心なファンが、蔵の人と一緒になってお酒を勧めているところもある。
11月9日の第2部のチケットは、大変安かったのだが、安く飲めるから来たというお客さんはなく、出品酒や各ブースのお酒を熱心に確認しているお客さんばかりだ。

時間の都合もあり2時間ほどで失礼したが、今回の行事で気がついたことを確認しておこう。

今回の会は、市販酒で競っていること、小さな蔵が世に出るよい機会であること、開催が業界全体の活性化につながることなど多くの特徴があるが、その上で、更に一点指摘しておきたいのは消費者を中心に据えていることだ。
消費者を中心に据えることは、消費者の好みを把握することや話題づくり、生産者への刺激などの効果が期待できる。しかし、それ以上に行事への参加を通して、参加者は滋賀の酒全体への理解、やがては食生活全般への理解と認識を深めることができるという意義がある。つまり、ただ飲めばよいという消費者を、人生をより深く楽しむことのできる「文化度の高い消費者(?)」に転換していくことができると考えられる。

今回の参加は少し遠かったが、大変満足できるものだった。主催された滋賀県酒造組合の方やメールで情報を送ってくれた家鴨さんに感謝したい。今後、滋賀県酒造組合の取組が、滋賀の酒全体のレベルアップや業界の振興に役立つことを願って已まない。

(報告:T)